人が抱きやすい欲求をまとめたものに『マズローの自己実現論』があります。
現在では、サービス利用者のニーズ(必要なもの)の把握、自己理解や他者理解を深めて対人関係を円滑にするために活用されることもあります。
▽この記事から分かること▽
・(前半)マズローの5つの欲求の内容
・(後半)漂着した島からの帰還になぞらえた5つの欲求を抱く過程の例
マズローの自己実現論って何? 心理学者アブラハム・マズローって誰?
自己実現理論(じこじつげんりろん、英: Maslow’s hierarchy of needs)とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものである。
出典:Wikipedia-自己実現論

あくまでも欲求の抱きやすさを通して「人は自己実現に向けて絶えず成長する」ということを伝えるための図です♪
6つの欲求分類 | 階層に属する項目 | 成長or欠乏 |
▽第6層▽ Self-transcendence 【自己超越】 | ・Transcenders (超越した者たち) | Being needs 存在欲求※③ (成長欲求) |
△第5層△ Self-actualization 【自己実現の欲求】 | ・morality (道徳) ・creativity (創造性) ・spontaneity (自発性) ・problem solving (問題解決) ・lack of prejudice (偏見の欠如) ・acceptance of facts (事実の受容) | Being needs 存在欲求 (成長欲求) |
△第4層△ Esteem 【承認の欲求】 | ・self-esteem (自尊心) ・confidence (信頼) ・achievement (成果・実績) ・respect of others (他者の尊重) ・respect by others (他者からの尊敬) | Deficiency needs 欠乏欲求 |
△第3層△ Love and belonging (=Social needs) 【所属と愛の欲求】 (=社会的欲求) | ・friendship (友情) ・family (家族) ・sexual intimacy (性的親密度) | Deficiency needs 欠乏欲求 |
△第2層△ Safety needs 【安全の欲求】 | ・security of body (身の安全) ・security of employment (雇用の安全) ・security of resources (資源の安全) ・security of morality (道徳の安全) ・security of the family (家族の安全) ・security of health (健康の安全) ・security of property (財産の安全) | Deficiency needs 欠乏欲求 |
△第1層△ Physiological needs 【生理的欲求】 | ・breathing (呼吸) ・food (食欲) ・water (水) ・sex (性欲) ・sleep (睡眠欲) ・homeostasis (ホメオスタシス※①) ・excretion (排泄) | Deficiency needs 欠乏欲求※② |
この5つ(厳密には6つ)の欲求について下位の欲求が充足するほど、より上位の欲求への衝動が芽生えやすいとされています。
ただし、マズローは下位の欲求が完全に満たされていなくても上位の欲求を抱くとも指摘しています。
※① ホメオスタシス(生体の恒常性)とは何?
※②欠乏欲求とは何?
マズローの欲求段階説の内、第1層~第4層(生理的、安全、社会的、承認の欲求)までが欠乏欲求と言われており、文字通り欠けていると満たしたくなる欲求のことを意味します。
また、その欠乏欲求は「物理的欲求」と「精神的欲求」として下記のように2つに分けることができます。
・物質的欲求:生理的欲求、安全の欲求(第1~2層)
・精神的欲求:社会的(所属と愛の欲求)、承認の欲求(第3~4層)
物質的欲求って何?
食べ物、住まい、お金、など、物質・物資によって満たされる欲求が当てはまります。
精神的欲求って何?
他者との絆や信頼、自分への尊重、他者への尊敬、自分のなりたい自分に近づこうとすることなど、物の様に形がなく視認できない欲求を指します。

やっと、出番が来たようだ
無人島?に漂流した人に例えるマズロー欲求5段階説
ある日、海を泳いでいたら海流に流され、気が付いた時には見知らぬ島に漂着していた?
第1層:生理的欲求を満たす!

漂着したバルオくん!
まず、初めにしたくなること何ですか?

泣きわめく、食べれるもの探して、おしっこして、ふて寝する!
・泣きわめく(ストレスを外に流して呼吸を整える)
・食べれるものを探す(食欲)
・おしっこがしたい(排泄欲)
・ふてくされて寝る(睡眠欲)
第2層:安全の欲求を叶える!
例えば、「サバイバル上等‼身の安全なんていらない、獣が出ても倒して生きる糧にするぜ!」というような戦闘民族であれば当てはまらないかもしれませんが、多くの人にとっては生理的欲求がある程度確保されると安全を満たしたくなるものではないでしょうか。

お、2階建ての小屋を見つけたぞ!
もしかしたら、島に誰かいるのかも?
とりあえず、ここに食料を置いて寝床にすることにしよう。
・二階建ての小屋を発見して寝床を確保(身の安全性を高めた)
・食料の置き場にもなった(資源の安全性が高まった)

あのさ、誰かいるかもしれないなら勝手に使ったら危なくない?

人は話し合えば分かりあえる!
第3層:社会的欲求(所属と愛の欲求)への遭遇!

おい、何をしている!?

あんた、誰?

えーと、俺は漂流者で行く宛てがないんです。
暫くの間、置いてもらえませんか。

なるほど、事情はわかった。
ただし、2階には上がるな!
まだ、君を信用したわけじゃないんだ。

仕方ないわね。
絶対に2階に上がってこないでね!

泊めてくれるだけでありがたいです。
わかりました、約束します。

何か俺にできることはないだろうか?
お礼もしたい。
それに帰るための情報も集めないとな。
・仲良くなりたい(所属の欲求)
・お礼をしたい(愛の欲求)
第4層:承認の欲求/尊重の欲求の芽生え!
・自己承認欲求の例▷自己の成長への満足、自身の能力への自信、独立欲など
・他者承認欲求の例▷称賛と賞賛、地位や名誉、評判、SNSのイイネ欲、優越欲など
他者が評価を担うものにおいては、過度に期待されたり、祭り上げられり、過度に叩かれたり、と誰しも苦い体験がありますよね?
一方で自己承認欲求が満たされてくると、自己実現に向けての欲求が湧きやすくなります。
ー翌朝ー

何か手伝えることないですか?
少しでも役に立ちたいんです!

それなら、薪割りを手伝ってもらおうか。

あの人、悪い人ではなさそうね。

義理には人情だよな。
自分のそういう所は好きだ。
よし、がんばるぞ!
・役に立ちたい(信頼への第一歩)
・自分のそういうところが好き(自己からの承認)
・悪い人ではなさそう(他者からの承認)
・お手伝いをした(成果)
・手伝うこと受け入れた小屋主の視点(他者の意思の尊重)

おーい、バルオくーん!
これからどうするの?

ずっと厚意のお世話になるわけにもいかないし、
帰る方法探すよ!
第5層:自己実現の欲求を達成するために!
▽5つの欲求全てを満たした「自己実現者」の15の特徴▽
1.現実をより有効に知覚し、より快適な関係を保つ
出典:Wikipedia-各階層の詳細
2.自己、他者、自然に対する受容
3.自発性、素朴さ、自然さ
4.課題中心的
5.プライバシーの欲求からの超越
6.文化と環境からの独立、能動的人間、自律性
7.認識が絶えず新鮮である
8.至高なものに触れる神秘的体験がある
9.共同社会感情
10.対人関係において心が広くて深い
11.民主主義的な性格構造
12.手段と目的、善悪の判断の区別
13.哲学的で悪意のないユーモアセンス
14.創造性
15.文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越

あの~、この島に船とか来ないですか?

この島には来ないが、沖になら週に1度くらいは通るぞ?

悲観しても進まないし、イカダを作ってみますか!
-イカダ作成中-

丸太は用意できても木を縛る紐がないんだよな。
ツルで代用できるかな?
あるいは、木に溝を掘って接ぎ木を打ち込むか…
ー旅立ちの日ー

そうか、もう行くのか。
健闘を祈る!

これ、食料と水!
無いと困るでしょ。

ありがとう。
お世話になりました!
この御恩一生忘れません。


無事に帰れたら、他の人が危険な目に合わないために得た知識を伝えたい!
・帰る手段を探す(自発性)
・イカダを作る(創造性)
・悲観しても進まない(事実の受容)
・紐の代用を作成(問題解決・創造性)
・沖の船への可能性に挑む(できないという偏見の除外)
・危険な目に合わないために得た知識を伝えたい(道徳)

これらは、あくまで芽生えやすい欲求に従って制作したフィクションですので全てを鵜呑みにはせず一考してみてください。
鏡の屈折率が100%ではないように「誰か」というフィルターを通すごとに主観や偏見が混じり本来の姿からズレていくものです。
また、本来の自己実現に向けた成長は、例に挙げたような一時の経験ではなくその人の生涯の中で成熟していくものですので、そういった視点を踏まえて自己理解や他者理解に繋げていきたいものですね。